影のない女

5月29日(土) 14:00開演 新国立劇場・オペラ劇場
影のない女
2009/2010シーズン[New Production]
リヒャルト・シュトラウス/全3幕・ドイツ語上演/字幕付
(上演時間 1幕 70分 休憩 25分 2幕 60分 休憩 25分 3幕 60分 合計4時間)
スタッフ
【指 揮】エーリッヒ・ヴェヒター
【演出・美術・衣裳・照明】ドニ・クリエフ
【企 画】若杉 弘
【芸術監督代行】尾高忠明
【主 催】新国立劇場

キャスト
【皇帝】ミヒャエル・バーバ
【皇后】エミリー・マギー
【乳母】ジェーン・ヘンシェル
【霊界の使者】平野 和
【宮殿の門衛】平井香織
【鷹の声】大隅智佳子
【バラク】ラルフ・ルーカス
【バラクの妻】ステファニー・フリーデ
【合 唱】新国立劇場合唱団
管弦楽】東京交響楽団
 
リヒャルト・シュトラウスの傑作が新国立劇場に登場いたします。演出は、イタリアとドイツを中心に活躍しているドニ・クリエフが新国立劇場初登場。歌手陣はドイツオペラのスペシャリストが集結。日本で本演目が本格的に公演されるのは、1992年以来18年ぶりとなります。(新国立劇場HPより)
 
18年前のは、多分私の観た、愛知芸術劇場のこけら落としサヴァリッシュさん&ミュンヘンオペラ・市川猿之助演出のやつでしょう。あれからもうそんなに経ってしまったのか。つい先日DVDが出てたので買っちゃいましたが、これを観るので見ずにとっておきました。さいごのきらきらぶりが印象に残っています。あと、最後の二重橋から垂らす布が1枚、うまく垂れなかったこととか、新しい劇場のバーコーナーの動線が悪くて超溜まってたとか、着物の人と社交のひとが多くてご挨拶してるひとばかりだったとか、やばい、肝心の本編の印象が・・・演出上の動きが歌舞伎ぽく仕立てられてたのと、きらきら皇帝夫妻に比べてバラク夫婦が本当に下層の暮らしをしているような、みじめぽい感じが強められていたとか。大昔のことでちゃんと覚えてるわけではないんですが、もちろん。
 
さて今回のは、まず演出についでだと、パンフにそう書いてあったせいで、魔笛その後的にも見えました。皇后はそうというより世間知らずのお嬢ちゃんから、いろいろ学んで成長していく感じ(前のも愛とかそういう感情を学んではいたが、年齢的成長感はなかった)。アリスの赤の女王ぽい乳母は、お嬢様思いのいいひとぽくみえつつ、絶対人ではない。最初人間界におりたときにはその乳母のうしろで、うろうろしてたりかくれたりでほとんどしゃべることもなかったのに、いつの間にかいっぱい語れるようになっちゃって滔々と歌い上げる皇后、ほんと今回大熱演で、歌手もすばらしかったです。
ラク家は、今回はまあ普通のうちに見えます。バラクは働き者で家族思い。年の離れた嫁ながら、妻のことは気を使ってごちそう買ってきたりと大事にしてる。バラクきょうだいもいじわるいったりしてるけど気は良さそうで、家族は楽しそう。暮らし向きもそんなには悪くないんじゃない?普通の格好だし、という感じです。もんくたらたらひとりとげとげしい妻が、ただの不満主婦にみえて他の人がかわいそうでみてて厭な気分になるほどです。
いきなりその妻も、夫に強く言われて見なおして(これだけなの?)大切なものを取り戻す。が、いったん全てがおじゃんになって、バラク夫婦は落とされるわ、皇帝は石だわ(言うほどひどいとは思わないが印象は薄かったです)、その辺の急展開と皇后の成長のいきなりぶりが、演出的にわかりにくかった気はする・・・
黒子が舞台をちまちま動かすのですが、ずっとうごかしてるんで途中でちょっとうざかったのと、全体に暗くて地味に見えました。さいご、展開図だったおうちが組みあがって、ちゃんとした家になったのはほっとした。よかった。
 
歌手は女性陣が非常に素晴らしく、バラクもよかった。皇帝など余り出てこない人は、いいのか悪いのかというほどインパクトがない、が、皇帝は主役のひとりだからもっと出張ってもよかったのだろうか。
オケは、所々よれてて時々気になったりもしつつ、でもトータルで良しなのでオケの悪いところもそんなに気にならなかった。そういうものかもしれません。
来年だかにゲルギエフもやるようですが、今回は、国産のプロダクションでなかなかなものが観れました。この調子で新国立がんばれ、って思っています。